(8/12 Side Story)星空の夜――。

夜、1年ぶりにRと再会を果たした。
今回の旅では、俺には限られた時間しかないため、星空撮影も兼ねての再会となった。
海と星の見える古びたベンチに座り、この1年間のお互いの出来事や、私生活、人生観について語り合った。
宮古島の星空を見ながら、Rがどこまでも澄んだ歌声で、沖縄の島唄を俺に聴かせてくれた。
この1年間、それぞれが暮らす街で、それぞれの時間が流れ、それぞれの出会いがあった。
1年前と何も変わっていないような気もしたし、1年前とは何もかもが変わってしまったような気もした。
別にセンチメンタルになっているわけじゃない。
ただ、もうあの日には帰れない――、そのことだけは揺るぎない現実として受け入れなくてはならないことを知った。
長くて短い夜――、そんな表現が一番ふさわしい儚い時間は過ぎた。
Rと会うのは、おそらく今夜が最後だと感じていた。
もう二度と会うことはないんだろうなと確信しつつ、じゃあ、またね――、そう手を振って別れた。
これでいいんだ。それでいい。
お互いの人生の時間軸上で、天文学的確率で交錯した一瞬の時間――。
偶然交わった光はやがてお互いに過ぎ去り、そしてまた新しい光と交錯するのだろう。
人生という光は、決して立ち止まることはできない。
だから人は永遠に変わっていくのだろう。
そして通り過ぎた光の道は二度と引き返すことはできない。
明日、朝日が昇れば、お互いの残りの人生最初の一日がはじまる――。

『池間大橋と北の星ぼし』
2015/08/12 Wed. 23:30 |
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