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HARUのスローライフ日記

~死す時は宮古の海に抱かれて~

(9/7)「新しい記念日!」の巻 

20160907 masumi (11)
ついに彼女との約束の日がやってきた。
朝は一瞬晴れ間も見えたのだが、”100%雨”の予報通り、大荒れの天気となった。
だが焦ることはない。雨の日のプランは完璧に練ってある。

20160907 masumi (1)
彼女を迎えに行くところから1日は始まった。
夜以外に彼女と会うのは、今日が初めてだ。
彼女のリクエストに応えて、まずは”崖ツアー”からスタートした。

20160907 masumi (2)
ちょうど12時に合わせて昼食。
以前、友人から教えてもらった”オーシャンリンクス宮古島”の”味噌宮古そば”を注文。
曇天だったが、眼下に広がる宮古ブルーのオーシャンビューに彼女は喜んでくれたようだった。

20160907 masumi (3)
ボラガーの”海宝館”に行った。
世界中の貝が展示されている”貝のミュージアム”だ。
他に来館者はなく、二人だけの時間をゆっくりと楽しむことができた。

20160907 masumi (4)
”海宝館”を出たあとは、再び”崖ツアー”再開。
俺のとっておきの崖ポイントへ案内する。
過去の様々な経験が役に立つ。

20160907 masumi (5)
”仲原鍾乳洞”へ行くつもりだったが、電話がまったく通じなかった。
そこでサブプランの”友利のアマガー”に行くことにした。
”仲原鍾乳洞”にも負けない神秘性と荘厳さがあるのではないだろうか。

20160907 masumi (11)
本日のメインイベントは”シーサー作り体験”。
宮古島での延べ滞在日数は450日以上になるが、シーサー作りは今日が初めてになる。
シーサー作りなんて面白いの――?、という根拠のない先入観で今までやったことがなかったのだ。

だが実際にやってみると、想像以上に面白かった。
頭も使うし、指先も使う、さらに作っていくうちに、どんどん自分なりのこだわりが出てくる。
久々に時間の経つのも忘れ、ひとつのことに熱中した。

20160907 masumi (7)
やがて完成。
画面向かって右が俺、彼女の作ったシーサーは左だ。
”シーサー作り”は、決して”雨の日のサブプラン”などではなく、これはもう、”れっきとした”宮古島のメインプランだ。
彼女と一緒にシーサーを作ったということも、楽しさを倍増させてくれた要因かもしれない。

20160907 masumi (8)
相変わらず雨は降り続けていた。
宮古馬のいる厩舎へ行ってみた。
人懐っこい宮古馬と彼女のツーショット写真を撮ったりした。

ちょうどお腹もいい感じで空いてきた。
市街地へ戻り、食事の予約時間まで二人で西里通りを散策した。
行き交う人には、俺たち二人はどのように映っていたのだろう。

20160907 masumi (10)
俺が予約した店は、先日も訪れたばかりの、”焼鳥・秀”だ。
彼女がふとしたときに”焼鳥が食べたい”と言っていたのを覚えていたので、何の迷いもなくこの店を予約した。
今日1日の出来事を振り返りながら、”彼女”との食事を楽しんだ。

20160907 masumi (9)
彼女がふざけて、俺のカメラで隠し撮りをしていた。
この写真はそのときのものだ。
こんな些細なことが少しずつ積み重なって、人と人との距離は縮まっていくのだろう。

2時間ほど滞在したのち、二人は店を出た。
俺は彼女を送るため、アルコールは飲まなかった。
だが、幸せな気持ちに変わりはなかった。

彼女を送り届ける途中、夜の海を見に行った。
夜風に吹かれながら、トゥリバーの堤防を歩いた。
伊良部大橋を渡るヘッドライトの光が不規則に夜を照らしていた。

ほぼ半日一緒にいた。
長かったような、短かったような、どちらともいえる1日だった。
突然のスコールで何度も走って車まで戻ったことも、今は笑い話に変わっていた。

今日は9月7日。
彼女は9月21日に宮古島を離れる。
それまであと何日あるのだろう。

一見自由に見える二人だが、”時間”という、目には見えない鎖で縛られている。
いずれ離れることが運命だとするなら、これ以上、距離を縮めても辛いだけ。
だったらいっそのこと、このまま”いい友達”として、別れたほうがいいのではないだろうか。

佐良浜の光を遠くに見ながら、心の中は揺れていた。
少しの間、お互いに何も話さない無言の時間が流れた。
何か言わなければ――。

そう思ったまさにそのとき、止んでいた雨が突然、また降り出した。
マズい、車に戻ろう――。
言うべきはずだった言葉を飲み込み、彼女の手を取り車に戻った。

じゃあ帰ろうか――。
車は動きだしたが、車内には少し無言がちな空気が漂っていた。
どちらかが何かを話しても、すぐに会話が途切れてしまう。
そんなことを繰り返している間にも、彼女をおろす場所が徐々に近づいてくる。

やがて、朝、彼女を乗せたのと同じ場所に着いた。
車を停車させ、エンジンを切った。
静かな場所であり、窓も閉まっていたので、車内は静寂に包まれた。

今日はありがとう。すごい楽しかった――。
うん、俺もすごい楽しかった。ありがとう――。
お互いの目を見ながら、同じことを順番に言った。

じゃあ、またあとでLINEするね――。
俺が言いたいことはそんなことじゃない。
だが本当に伝えたい言葉は、どうしても切り出すことができなかった。

うん――。
そう言いつつも、彼女が車を降りようとするのをためらっているようにも見えた。

あのさ……、もう少し時間大丈夫――?
思わず咄嗟(とっさ)に出た言葉だった。
心臓の音が彼女に聞こえてしまいそうなくらい、心拍数が上がるのを感じた。

うん、平気……かな――。
そう、ためらいがちに言うと、彼女はドアノブにかけていた手を、再び自分の膝の上に戻した。

車はまた暗闇の中を滑るようにゆっくりと動き出した。
近くの海辺へ着いた。窓を開けたままエンジンを切った。強い風が吹いていた。
辺りは真っ暗で、月明かりに照らされた波しぶきの白さだけが見える。

しばらくの間、沈黙の時間が流れた。
気まずい沈黙ではなく、どちらかが言葉を発する前の意味のある沈黙だった。
俺は意を決し、漆黒の海に向けていた視線を、サイドシートの彼女に向け変えた。

うまく伝えられたかどうかはわからなかったが、思っていることをすべて言葉にした。
彼女はうつむいたまま、黙って俺の言葉に耳を傾けていた。
車内が暗かったため、彼女の微妙な表情まで読み取ることはできなかった。

しゃべっていた時間が10秒だったのか、5分だったのか、時間の感覚がまったくなかった。
だがとにかく伝えるべきことはすべて伝えた。
最後の言葉を言い終えると、俺は視線を再び漆黒の海に戻し、彼女の言葉を待った。

少しの沈黙のあと、彼女の唇が動いた。

ありがとう。うれしいよ――。

その言葉を追いかけるように、彼女は今の気持ちをすべて包み隠さず話してくれた。
彼女が発する言葉のひとつひとつが重要な意味を含んでいた。
彼女の話を最後まで聞いたとき、ようやく彼女の本心を知ることができた。

わだかまりや不安が、すべて消えた瞬間だった。

やがて、打ち寄せる波の音だけが静かに夜を包んでいった――。
2016/09/07 Wed. 23:30 | trackback: -- | comment: -- | edit