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HARUのスローライフ日記

~死す時は宮古の海に抱かれて~

(9/9)「未来予想図!」の巻 

20160909 oogamijima (1)
彼女と丸1日一緒に過ごせる日。
そして彼女とサヨナラしなければならない日が訪れた。
天候が回復したので、予定通り大神島へ渡ることにした。

20160909 oogamijima (3)
標高74.5メートルの遠見台まで登った。
あいにくの曇天だったが、遠見台からの眺めはあいかわらず素晴らしかった。
彼女の写真をたくさん撮ったが、俺の心境は絶望的なほどに複雑だった。

二人の思い出になるであろう、数々の楽しい写真。
だがいくら撮影したところで、今日で最後なのだ。
何もかもが今日で終わってしまう。

20160909 oogamijima (5)
彼女の無邪気で屈託のない笑顔を見るたび、俺の心は張り裂けそうになった。
そして今が楽しければ楽しいほど、真実を伝える決意が鈍ってしまう。
せっかく1日一緒に過ごせる日だというのに、俺の心は楽しさよりも、悲しみと後悔に支配されていた。

20160909 oogamijima (6)
大神島から宮古島に戻ったあとは、島尻マングローグ公園に行った。
他愛もない会話をしながら、遊歩道を2人でのんびり散策した。
だが俺のアタマの中は、どこで真実を切り出すか――、そのことでいっぱいだった。

どうしたの?なんか元気ないね――?
俺とはだいぶ身長差のある彼女が、斜め下から俺の顔を心配そうに覗き込む。

大丈夫――?
半分おどけて、半分真剣な表情の彼女が、俺の腕にイタズラっぽくしがみついた。

ううん、なんでもない。大丈夫だよ――。
まったく大丈夫ではない表情でそう答える俺に、彼女の表情が少し曇ったように見えた。
もう夕暮れが近かった。

20160909 oogamijima (7)
宮古島の北東側にある海岸へ移動した。
夕闇が迫る中、砂浜へ下りた。
周りに人はおらず、俺と彼女だけの時間と空間が用意されていた。

2人で砂浜に座って海を見た。必然的に2人の距離は近くなる。
しばらくの間、お互いに何もしゃべらず、ただ海を眺めていた。
そこには、寄せては返す波の音と、彼女の温もりだけがあった。

この温もりを失いたくない――。
俺はこの期に及んで未だに躊躇していた。
真実を告げると決断したはずなのに、彼女の笑顔と温もりが俺の決断を鈍らせる。

もうこのまま嘘をつき通せばいい――。
悪魔の囁きが聞こえてきた。
その声は次第に大きく強くなってくる。

そんなときだった。
ふいに彼女が言葉を発した。
ねぇ――。

ん――?
何だろうと思った。

あのね――。
HARUくんのこと……、すごい好きだよ――。

その言葉を聞いた瞬間、今までこらえていたすべての感情が、俺の中で音を立てて崩れていくのがわかった。
彼女と一緒にいたいと願う、俺のわがままな思いなんてどうでもいい。
こんなに純粋に俺のことを想ってくれている女性に、もうこれ以上嘘をつき続けることなどできない。

彼女のことを本当に想っているなら、真実を伝えることこそが本当の愛情なんだと、あらためて確信した。
嘘をつき続けるのは、彼女のことを想っていないのと同じことだ。
別れることになっても構わない。もうこの女性に嘘はつきたくない――。

涙がぼろぼろと溢れてきた。
さまざまな感情が入り乱れ、溢れ出る涙をおさえることも、真実を隠し通すことも、もう俺にはできなかった。
俺は彼女の目を見つめ、言葉を詰まらせながら、ついにすべての真実を告げた。

そして心から謝罪をした。

おそらく彼女からの別れの言葉は数秒後に迫っていた。
顔を平手打ちされるかもしれない。
もちろんその程度の覚悟はできている。

いずれにせよ、真実をすべて告げた時点で俺の心は悪夢から解放されていた。
分厚い雨雲が一気に吹き飛ばされるようだった。
もう何もかもが終わったのだ。

別れは死ぬほど辛い。
だが自分の中でケジメをつけれたことに清々しさも感じていた。
あとは思い切りフラれればいい。

俺は彼女からの別れの言葉を待った。
しかし俺が聞いたのは、まったく予期していなかった言葉だった。

よかった――。
彼女がふいに言葉を発した。

よかった――?
俺は何のことだかわからず、ただ彼女の次の言葉を待つしかなかった。

よかった、そんなことか……。
最近、病院ばかり行ってるから、何か大きな病気にでもかかっているのかと思ったよ――。
彼女は心配そうな表情と、安堵感を浮かべた表情の、2つの異なる表情を同時に見せた。

本当によかった……、重い病気とかじゃなくて――。

彼女のその優しさの前に、自分の愚かさを知った。死ぬほど自分を恥じた。
嘘をつかれていたことを責めることもせず、俺のカラダを心配してくれるなんて……。
彼女への申し訳ない気持ちで涙が止まらなかった。

震える声で何度も謝罪する俺に、彼女が優しい声と笑顔でささやいた。
もう嘘はつかないでね――。

俺は砂浜に泣き崩れた。
彼女の優しさが痛いほど胸に突き刺さった。
こんなに心が純粋で優しい人を今まで見たことがない。

この女性を悲しませるようなことは、もう二度としてはいけない。
そして、俺はこの人を幸せにする――。
そう心に深く誓った。

――夕暮れから夜になった。
2人は海の見える駐車場にいた。
今日1日いろいろなことがあった。

車内には静かめの音楽が流れていた。
今後のことを2人で話し合った。
宮古島を離れたあとのことだ。

俺の住む横浜と、彼女の暮らす街は決して近くはない。
だが新幹線で2時間もあれば行ける距離だ。
会おうと思えばいつだって会える。

いろいろな困難があるかもしれない。
だがその時その時で、2人でその壁を乗り越えていけばいい――。
俺の肩に寄りかかる彼女の華奢なカラダをそっと抱き寄せた。

車内には、徳永英明の『未来予想図Ⅱ』が優しく静かに流れていた――。
2016/09/09 Fri. 23:00 | trackback: -- | comment: -- | edit