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HARUのスローライフ日記

~死す時は宮古の海に抱かれて~

(9/21)「別れの朝!」の巻 

M美が寮を出発する前の本当にわずかな時間だが会うことができた。
25分だけの限られた時間だった。
幸いなことに、彼女の暮らす寮からは3分もあれば海に行ける。

最後に一緒に宮古島の海を見たかった。
空は今日もあいにくの曇天だった。
少し涼しい風に吹かれながら堤防を2人で歩いた。

言葉がうまく紡げなかった。
どうでもいいことばかり話してしまう。
肝心なときに人はダメなものだ。

結局、他愛もない話だけで終わった。
出発の時間が迫ってきたので寮まで戻り、いつもの場所に車を停車させた。
いよいよ最後のときが訪れる。

それでも言葉はうまく出てこない。
他愛のない会話をいくつか交わした。
やがてドアを開け車の外に降り立つ。

「じゃあまた……」
最後のときを迎えてもなお、そんな平凡な言葉しか出なかった。

「うん、またね」
彼女はいつもと変わらない様子だった。

かばんの中をいじっていたM美が、ふいに俺に紙包みを差し出した。
俺はそれを彼女の手から受け取った。
少し重みがあった。

「お手紙書いたんだー、私が飛行機に乗ったあとに読んでね」
口調はいつもと変わらなかったが、少しはにかんだような、照れくさそうな表情だった。

「え、本当に?あ、ありがとう」
M美は手紙を書くようなタイプではないと思っていたので、嬉しさよりも驚きのほうが大きかった。
最後のときになり、俺が知らなかったM美の一面を見た気がした。

「じゃあ、そろそろ行くね」
本当の別れの時間がきた。

「うん、わかった。気を付けて」
彼女の笑顔を見ながら言った。

彼女はこちらを数回振り返りながら、寮のエントランスへと消えていった。
俺は車に乗り込み、そっとサイドシートを見つめた。
もうそこにM美の姿を見ることはできなかった。

まるでM美の面影を重ねるかのように、彼女がくれた紙包みをそこに置いた。
包みをそっと開けてみる。
中には一冊のアルバムと封筒があった。

――つづく――
2016/09/21 Wed. 13:00 | trackback: -- | comment: -- | edit