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HARUのスローライフ日記

~死す時は宮古の海に抱かれて~

(9/29)「人命救助!」の巻 

俺はいつも通り、沖で水中写真を撮影していた。
近くで女性2人組がシュノーケリングをしているのは認識していた。
そんなごくありふれた風景だった。

しばらくしてふと2人組のほうを見ると、1人の様子が明らかにおかしい。
水面でバタバタもがいている感じなのだ。
ただならぬ異変を感じ、すぐにそちらへ向かう。

近くまで行って声をかけると、完全に溺れている状況だった。
一緒にいた女性はどうしていいかわからず、ただ傍観しているだけだった。
もちろん背の立つような場所ではない。

まわりに人はおらず、俺がなんとかするしかないということはすぐに理解できた。
とにかくパニックになっている女性を落ち着かせなければならないと思った。
20歳前後と思われるその女性を俺の肩につかまらせ、シュノーケルを口から外し、まずは大きくゆっくり深呼吸するよう促した。
そして俺がいるから、”もう大丈夫”だということを何度も伝えた。

とにかくその場で俺がやるべきことは、女性を安心させることと、落ち着かせることの二点だと思った。
女性は徐々に冷静さを取り戻しつつあるようだった。
ある程度、呼吸も整ってきたところで、まずは状況を聞いた。

シュノーケルで海水を大量に飲んでしまいパニックになったらしい。
そしてそのパニックが引き金となり、両足がつってしまったとのことだった。
会話もしっかりできていたので、まずは一安心だった。

シュノーケルとマスクをしっかりと再装着させ、呼吸の確保を確認したうえで、彼女を支えながらビーチまで一緒に泳ぐことにした。
幸いビーチまではさほど遠くはない。
女性に不安を与えないよう、いつも以上に冷静な口調で話しかけ、とにかく再びパニックにならないよう注意を払った。

一緒に泳いでいるとき、あることに気づいた。
なんと彼女はフィンを履いていなかったのだ。
足元をよく見ると、彼女が履いているのはビーチサンダルだった。
なんということだ……。

とりあえず、なんとかビーチまでたどり着くことができた。
あらためて事情を聞いてみる。
観光で来ていて、フィンも履かず、軽い気持ちで海に入ってしまったらしい。

特に諭したり叱ったりはしなかった。
一番の被害者は彼女自身なわけだし、彼女自身、身をもって海の恐ろしさを理解したに違いない。
とにかく無事で良かった。それに尽きる。

自分でも驚いている。
俺のあれほど冷静な自分がいることを、今日まで知らなかった。
信じられないくらい、落ち着いていた。
おそらく”自分がやらなければならない”という責任感が、俺を冷静にさせたのだと思う。

ライフジャケットを着ておそるおそるシュノーケリングしていたこの俺が、人を救助する側にまわるなど、いったい誰が想像できただろう。
この5年間で、宮古島の海は俺を強くしてくれたようだ。
俺が今まで宮古島の海に潜り続けていたのは、あの女性を助けるためだったのかもしれない――、そう思えたりもした。

2人組はようやく落ち着きを取り戻し、俺に何度も礼を言いながらビーチを去って行った――。
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2016/09/29 Thu. 13:00 | trackback: -- | comment: -- | edit