(5/22)「絶望のフライト」の巻

横浜港シンボルタワーでドローンのテスト飛行をしようと思っていたが、風が強すぎたため断念。
ドローンを飛ばすため、別の場所に移動。
ここなら風の影響も少なく、見通しも良いので、ドローンのテスト飛行には最適だ。

風はそこまで強くなかったが、機体が軽いために、なかなか思うように操縦できない。
そんな中、いきなり木に激突させてしまい、そのまま枝に引っ掛けてしまった。
引っかかった位置は地上から5メートルほどの高さ。
木に登って回収しようにも、引っ掛かっているのが枝先のため、機体に近づくことすらできない。
仕方なく炎天下の中、巨大な公園内に「長い棒」を探す旅に出た。
しばらく歩くと、明らかに使われていなさそうな「ほったて小屋」のわきに、おあつらえ向きの「塩化ビニールパイプ」を発見。
長さ3メートルほどの、その古びた灰色のパイプを引きずりながら公園内を練り歩く。
完全に不審者である。
最近は物騒な事件が多いので、もしこの日、公園内でむごたらしい事件が起きていたら、俺は間違いなく容疑者として任意同行を求められていただろう。

機体の引っ掛かっている木に戻ると、早速、回収作業を開始した。
俺の身長180センチに約3メートルのビニールパイプ。
背伸びをして、ようやくパイプの先端が機体に触れることができた。

そして無事に回収。
本当に良かった。
よくぞ帰還してくれた、マイドローン。

なんせ、まだ先月購入したばかり。
たった1ヶ月で失くすわけにはいかない。
そんなことは絶対にあってはならないのだ。

予備バッテリーだって、先週追加購入したばかりだ。しかも4個も。
だから宮古島に行くまでは、ドローンを失くしたり、壊したりすることは、絶対に厳禁なのだ。
そういう強い意志があるからこそ、炎天下の公園内を人目も気にせずパイプを引きずりながら練り歩くこともできたというわけだ。

まだ陽は高い。
気を取り直して、ドローンのテスト飛行再開。
さきほどのことを教訓として、今後は気をつけて飛ばそう。
風がだいぶおさまっていたので、高度を上げていく。
動画のテスト撮影も兼ねているので、なるべく上空からのアングルも試したい。
ドローンの慣らし運転をしながら、動画撮影のスキルも少しずつ磨いていけばいい。
気のせいか、なんとなくドローンのコントロールがうまくいかない。
上空に吹いている風に煽られているせいなのか。
少し怖くなって、高度を下げようとするが、やはりうまくコントロールできない。
機体は俺の意思に反して、どんどん断崖のほうに向かっていく。
おいおい、冗談だろ――。
360度ある中で、なぜよりによってそっちへ行くのだ。
しかしまだコントロール次第では、軌道を変えられる。
操作に集中し、なんとかこちら側へ戻そうと試みる。
だがドローンは、そんな俺をあざ笑うかのように断崖方向へ吸い込まれていく。
もはや完全に制御不能。
その数秒後……。
岩肌に激突――。
フェラーリレッドの機体が断崖に激突した瞬間、まるで美しいスローモーションのようだった。
そのまま岩肌に何回かぶつかりながら崖下に落下。
モーター音も途切れた。

ドローンが落下した場所は、池を挟んだ向こう側。
仮に、なんとか向こう岸に渡れたとしても、背丈ほどもある木々やブッシュが行く手を阻む。
回収は不可能。もうあきらめるしかない。
高額紙幣がはかなく飛んでいった瞬間だった。
あぁ……。
こんなことなら、ドローンの空撮動画ではなく、ドローンが断崖に激突する瞬間をデジカメで撮影しておけば良かった。
ドローンの空撮動画よりも、よほどそちらのほうが面白かったに違いない。
そしてショックを受けている俺のショットも収めておけば、さらに面白さは倍増していたことだろう。
こうして、俺の約1ヶ月間に渡るドローン生活は、悲しい終わりを告げたのであった――。
2017/05/22 Mon. 15:00 |
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